2011年8月30日火曜日

富山外専のころ②


V. H. Mair 教授からのてがみ①


V. H. Mair 教授からのてがみ②

Mair 論文 


張聡東論文


「スミ・シム・SMITH 




日漢英3言語の音韻比較にとりくむ
1991年に発表した「コトダマの世界」のサブタイトルを「象形言語説の検証」としました。しかし、この検証作業は主として日本語と中国語についておこなったもので、英語音との比較は、ほんのフロクていどのものでした。

「日漢2言語の音韻比較だけに適用できる仮説など、仮説の名に値しない。せめて日漢英など3言語以上の言語を比較せよ」という批判の声が多数よせられました。

わたしは自分の語学能力の限界がわかっているので、日英の音韻比較はどなたかに共同研究をお願いできたらと考えていました。しかし、そういうモノズキな方は、なかなか見つかりません。やむなく「隗ヨリ始メヨ!」 ハジをかくのは承知の上で、まともに「日漢英3言語の音韻比較作業」にとりくむことを決心しました。

批判と同時に「音韻比較には、双方の言語について、まず古代語の音形くらいは確認せよ」という助言もいただきました。



日漢英s-m音語の基本義をさぐる
1992年から{s-m音語}に取りくみ、3年連続で中国語学会で発表させていただきました。1992.10.「スム[住・澄]・シム[染・占・滲]考」中国語学会42回大会。姫路獨協大学。
1993.10.「再論;スミ[]・シム[]SMITH中国語学会43回大会。都立大学。…研究発表要旨はB5判44ページ、サブタイトルに「スミ文化の系譜」。研究発表の席で、おおくの質問・異論:①はたして「スミ文化」といえるだけの実体があったのか?②「古事記」の中にスミ「炭」の用字例がみあたらない。「スミ[]文化説がなりたたないのではないか?…etc.計6項目。


. .  Mair教授の助言
この学会(都立大学)の直前9月、大阪の民族学博物館でひらかれた国際シナ・チベット言語学会の会場で、たまたまアメリカの. .. Mair教授(ペンシルバニア大学、デユーク大学から交換教授として京都大学に在籍中)を紹介され、イズミから「研究発表要旨」をお渡ししました。10月にいただいた手紙で「インド・ヨーロッパ語の語源研究には、A. H. D.のフロク『インド・ヨーロッパ語の語根と派生語一覧』を利用するのが一番便利」と助言されました。あわせて、論文2編を贈られました。
1994.10.「スミ[]・シム[]SMITH中国語学会44回大会。名古屋大学。…前回発表の席で出された質問や反論に回答するとともに、Ⅴ. . Mair教授の助言や張聡東論文に学び、三たび{s-m}音語をとりあげ、インド・ヨーロッパ語と日漢語音との対応関係をさぐりました。


「スミ・シム・SMITH」を刊行 
  1995.4.「スミ・シム・SMITH(サブタイトル「スミノエ神はSMELTING MAGITIAN」、「古代日漢語音の中にインド・ヨーロッパ語根をさぐる」)を刊行。
 第1部 {s-m}音語論議の経過。   
 第2部 {s-m}音語の背景と系譜
 第3部 {s-m}音のコトバ   
 付表・付図・資料       A4判、148ページ。

印刷資金については、志田延義山梨大学名誉教授・石沢義文富山県日中友好協会会長・小川弘北陸経済研究所専務理事、お三方の連名で基金募集を呼びかけていただき、なんとか調達できました。600部を印刷、関係者に配布。
  巻頭にかかげた「スミ・シム・SMITHのうた」の1節を紹介します。
  フイゴで スミ火を おこし
  イシを ふかし
  メロメロに とかし
  スミを イシに スミこませ
  シミこませ
  スミきらせて
  マスミの鏡を つくりあげた
  スミの MAGICIANS
  スミノエの神と Mr. SMITH
  古代金属製錬技術者たちの ものがたり


Mair論文などを翻訳
 前記、Mair教授から送られた論文2編を翻訳し、発表しました。
  ①「古代漢語MYAG、古代ペルシャ語MYGUSと英語”magician”」 Victor H. Mair著。イズミ オキナガ・鴫原佑治 共訳。1995年1月印刷。(当時、鴫原氏は富山外專中国語専修コース在籍中)
  ②「古代漢語の中のインド・ヨーロッパ語彙…新石器時代における漢語および中華文明の発生にかんする新テーゼ」張聡東著。イズミ オキナガ編訳。1994年1月印刷。もと、Mair教授の主宰するシノ・プラトニック ペーパーズ第7号(1988.1)として発表されたもの。張氏は、「Minnan[閩南]起源の台湾方言を話す中国人で、経済学とシナ学の博士号をもつ」…「B.C.3千年紀、東西民族文化の接触による混血児として古代漢語がうまれ、中華文明がうまれた。だから漢語にはインド・ヨーロッパ語の語幹がたくさんふくまれている」と指摘する(<訳者まえがき>より)。

2011年8月9日火曜日

富山外専のころ①

富山外国語専門学校開校式


ハク[掃・剥]・フク[吹・福]考 

マク[巻・幕]・ムク[向・目]考 

「コトダマの世界」

富山外専の講師に
1985年4月、富山外国語専門学校の中国語非常勤講師として採用されました。
この学校は、もともと2年制の英語専門学校として設立されたのですが、あわせて一般市民のために英語・中国語などの専修コースが開設されました。中国語コースは1教室で、松井武男先生が担当される予定でした。たまたま中国語の受講希望者が定員の2倍以上の多数に達したことから、急きょ1教室増設となり、イズミにまでお声がかかりました。

教えることは、学ぶこと
外專の生徒さんたちは、みんなまじめで、学習意欲満々でした。年齢は、青年から老年までまちまちでしたが、とりわけ子育てに手がかからなくなった女性たちのグループが目立ちました。それは、まさしく「女性の時代」の到来を告げるものでした。気づいてみれば、「源氏物語」や「枕草紙」の時代から、語学・文学は女性たちにとって得意の分野でした。
教室では、いろんな質問が出ました。中には、独自の解釈や見解をもっておられて、講師の意見を求めるというようなこともありました。
質問には、できるかぎり丁寧に答えました。即答できない場合は、宿題にしていただき、よく調べたうえで次回に回答するようにしました。
教えることは、学ぶこと。自分の好きなことを勉強していて、手当てがいただける。外專での16年間は、わたしにとって最も充実した研究生活の毎日でした。

中国語学会での研究発表… 1970~1992
1968年に「象形言語説」を発表してから、わたしは断続的に中国語学会(19787年10月まで「中国語学研究会」、また1989年10月「日本中国語学会」と改称)の全国大会に出席しました(6/14「山室中学校のころ②」を参照)。1982年からは、ほとんど毎年全国大会に参加し、象形言語説の検証作業としての研究発表をつづけました。
1982.11.ニヒ[新]・ニフ[丹生・入]考。中国語学会32回大会
1983.11.カヒ[貝]・カフ[買・合・甲]考。中国語学会33回大会
1984.10.サク[析・削]・スク[鋤・宿]考。中国語学会34回大会
1985.11.カツ[勝・割]・クツ[沓・屈]考。中国語学会35回大会
1987.10.ハク[掃・剥]・フク[吹・福]考。中国語学会37回大会
1988.10.マク[巻・幕]・ムク[向・目]考。中国語学会38回大会
1990.10.反、ハネ、フネ考。中国語学会40回大会

「コトダマの世界」を刊行
1989年秋、富山市制100周年記念「東アジア文明の源流展-中国陝西省出土文物展覧」(9.24~11.12. 富山市体育文化センター)の終了を機に、富山市日中友好協会副会長の役職をはずしていただきました。浮いた時間で、20年来書きためてきた「象形言語説」関係の作品をまとめ、1991年9月、社会評論社から「コトダマの世界…象形言語説の検証」として刊行しました。
できあがった本の内容を見て、自分ながら未熟・不備な点もありますが、とにもかくにも「日漢英の音韻比較」という壮大なテーマに挑戦できたことはよろこびです。
このあと、V. H. Mair 教授から「民族言語の音韻比較」について貴重な助言をいただくことになりますが、その点でも この本の出版は わたしにとって記念すべき一里塚だと思っています。
もくじの一部だけご紹介します。
第1部 コトダマ発生のメカニズム
 第1章 音声による象形
   1.仮説「象形言語説」        2.モジのはじまりは象形
   3.ABCも象形から          4.発声器官による象形
   5.抽象画のような象形        6.コトダマ効果と信仰
 第2章 日漢語音による象形
   1.ナフ[隠・納]・ニフ[丹生・入]    2.カヒ[貝]・カフ[買・合・甲]
   3.サク[析・削]・スク[鋤・宿]     4.カツ[勝・割]・クツ[沓・掘]
   5.ハク[掃・剥]・フク[吹・福]     6.マク[巻・幕]・ムク[向・目]
   7.ハネ[撥・反・翼]・フネ[船]
 第3章 英語音による象形
   1. /s~k/ sack, ski, skin    2. /k~t/ cut, gate
  3. /k~l(r)/ kill, cross      4. /g~l(r)/ glass, grass (中略)
   8. /t~l(r)/ tele-, tree      9. /d~l(r) dull, draw
   10. /str~/ straight, string   11. /~t(d, n)/ lived, heard, kept, known
第2部 コトダマの世界
 第1章 鉄器伝来の影
   1.わが名はヰヒカ           2.ヒコ大王のほこり
   3.岩をサク矢             4.田をスク・ナの神
 第2章 太陽信仰の系譜」
   1.カスガとクサカ           2.とぶ鳥のアスカ
   3.とぶヤトリの歌           4.朝日のヒデル宮