七ころび、八おき
わたしのリレキ書。イキザマ90年の記録。
2017年8月26日土曜日
2011年10月25日火曜日
ブログ完結のお礼とお願い
ブログに登場した作品(一部)
「七ころび、八おき」完結の お礼
ブログ「七ころび、八おき」は、前回の「「現代日本語音図」のこころみ」(10/11)で、いちおう完結の段階をむかえることができました。このブログは ほぼ時系列で、「父母の思い出」から「兄・姉・弟のこと」、「旭川中学のころ」「東京外語のころ」、「華北交通のころ」「帰国、富山定住」、「貸本屋開業」、「富山商業のころ」、「東部・北部・西部・山室中学校のころ」、「中国物産コーナーのころ」、「富山外專のころ」、「五十音図を見なおす」、「現代日本語音図のこころみ」まで、90年間にわたる自分のイキザマを記録してまいりました。資料的な面で不十分なところもありますが、どうにかまとまりがついて、ほっとしています。
1年間のおつきあい、ありがとうございました。
ふりかえってみると、わたしの人生はたしかに失敗の連続だったと思います。「玉音放送を聞いて、はじめて日本の敗戦を知った」とか、「富山商業に勤務して1年、中国語科廃止で失職」とか、いろんなミコミはずれがありました。つまりは、自分の勉強不足・情報不足による失敗です。
しかし失敗したおかげで学習できたことも、たくさんあります。敗戦で職場を失ったのは失敗ですが、そのおかげで、ぎゃくに「大本営発表にたよらない」、「多方面から情報をいれる」、そして「納得ゆくまでよく考え、自分の責任で判断する」という習慣がついてきました。日教組の運動に参加して管理職の経験無し、中国語学会の年次大会で十数回研究発表をしながら、大学教員の経歴無し、などというのも失敗かもしれません。しかし、そうした環境におかれたおかげで「象形言語説」にたどりつき、「現代日本語音図」をまとめることができたのも事実です。自分としては、大成功だと考えています。
つぎのブログ企画について、お願い
ブログ「七ころび、八おき」が完結したあと、ひきつづき 新ブログ「コトダマの世界」発行を企画しています。なにとぞ、よろしくお願い申しあげます。「コトダマの世界」という名称は、わたしの作品「コトダマの世界…象形言語説の検証」(社会評論社、1991.)と同名ですが、こんどはブログ名としても使うことにしました。
ブログ「七ころび、八おき」では、「イキザマ90年の記録」を目ざしてきました。そのメーン テーマは、「中国語との出会い」から「ヤマトコトバを見なおし」、「日漢英語音の対応関係を考える」など、コトバにかんするものでした。
新ブログ「コトダマの世界」では、サブタイトルを「コトバという名のトビ道具」としました。コトダマのタマは、タマ[霊・魂]であるとともにタマ[球・珠・玉・弾]でもあります。コトダマは、鉄砲ダマやミサイルのように宇宙空間をトビかけり、人の心にトビつくことができるトビ道具。痛快さと危険さとが同居する、フシギな感じの存在(イキモノ?)です。
これを機会に、あらためて「コトダマの世界」を、思いきり探検してみたいと考えています。みなさまのご参加をお待ちしています。
初公開は、11月8日の予定です。
2011年10月11日火曜日
「現代日本語音図」のこころみ
「カード64」トリフダ(k-p音)、05.11.1.
北日本新聞記事、05.11.18.
毎日新聞 記事、07.1.17.
「現代日本語音図」(試案)、08.6.20.
「同上・8音図」(部分)
「同上・日漢英共通64音図(部分)
北日本新聞]記事、08.9.7.
象形言語説の応用②
「64音図」をカルタに
「8音図」と「64音図」ができたことで、わたしが追求してきた「現代日本語音図」の構想がほぼ固まってきました。のこる課題は、「どうしたら、この音図(イズミ試案)を世間のみなさんに使ってもらえるか?」ということです。それには、「分かりやすく、使いやすい」ことが第一条件でしょう。そこで、わたしが考えついたのは、①「いろはがるた」式のゲーム カード、②大判用紙を使った一覧表形式、などです。
さしあたりまず、カルタ式のものとして「カード64」を作ることにしました。
「いろはかるた」では、「イ…犬も歩けば棒にあたる」、「ロ…論より証拠」、「ハ…花より団子」などのように、①イロハ順で編成、②内容は、1~2行のコトワザとなっています。「カード64」では、①「64音図」順(abc順)で編成し、②各カードの本文は2行程度。語音と意味の対応関係を意識させる内容となるように、くふうしました。
「カード64」のトリフダ・ヨミフダ
「いろはかるた」にならって、「カード64」でもヨミフダとトリフダ(それぞれ1セット64枚)を用意し、すべてのカード右肩に、「a-a」、「k-p」などの音タイプを標記します。トリフダでは、音タイプ標記の下に本文を記入。余白をイラストにあてます。イラストは切り絵作家、梶川之男さんにお願いしました。
たとえば「k-p」音カードの本文は、「カハ[河]は、大地にカブリつく カハ[皮・側]。」余白に、イラストで「遠方の山や谷(水源地帯)から平野部まで流れつく河」をえがきます。このカワ[河]の姿を「大地にカブリつく カハ[皮・側]」の姿と断言することで、ヤマトコトバの構造原理(音韻感覚・発想法・造語法)を解説します。はじめて「カード64」を目にした人が「こんな見方・解釈もできるんだ」と、おもしろがってもらえたらと願っています。やがてミイラ取りがミイラになって、「日本語も漢語も英語も、コトバを話す人たちの発声器官や聴覚器官の構造は大同小異。コトバの音韻感覚も、大同小異(のはず)」と感じてもらえることを期待しています。
トリフダのB面では、カハ[河・皮・側]やカブル[齧]の単語家族を紹介します。
ヨミフダのA面では、k-p2音節語(カフ[飼・替・買]・カブ[頭・株]・カヒ[貝・峡]・クフ[食]・クビ[首]など)やk-p音擬声語・擬態語(ガップリ・ガブガブ・グビグビなど)を紹介します。 B面では、k-p音の漢語(kap甲・閘・夾・鋏// kiep汲・級・給 )とk-p音の英語cap, cupなどを採集提示。日漢英の音韻比較資料を提供したつもりですが、いささか盛りだくさん過ぎて、消化不良をおこさないか、心配もしています。「カード64」は、1セット計128枚。印刷・裁断から紙箱容器づくりまで、すべて手づくり。2005年11月から2か月かけて、200セットを作成しました。
「64音図」が必要とされるとき
「カード64」は、北日本新聞(05.11.18)、毎日新聞(07.1.17)などでも取りあげていただき、ちょっとした話題を提供することができたようです。しかし、それ以上の反応はありませんでした。「風変わりで、おもしろそうだ」と思う反面、「年寄りのヒマつぶしにはいいだろうが、学生や社会人は、コトバのヒビキに聞き入ったり、単語家族をしらべたりしているヒマがない」といったところだったかもしれません。「ヒマつぶし」のためではなく、「時間を節約する」ためにこそ、[8音図]、[64音図]を利用してほしいのです。たとえばヤマトコトバを学習する場合、カウ<カフ[飼・替・買]・カブ[頭・株]・カヒ[貝・峡]・クフ[食]・クビ[首]などの単語を個別に時間をかけて学習するよりも、おなじk-pタイプのコトバとしてまとめて学習する方が、はるかに短時間で、しかも確実に習得できます。
日本語を母語とし、日本漢字音コウ<カフ[甲]についても学習ずみの場合は、k-p音の漢語(kap甲・閘・夾・鋏// kiep汲・級・給 )についても、ヤマトコトバk-p音と共通の音韻感覚をもつコトバとして、すんなり習得できます。さらにいえば、k-p音の英語cap, cup, cable, capital, give, giftなどについても、まったく共通の感覚で理解し、習得できるでしょう。
このことから、ぎゃくに考えてみましょう。「アタマのことを、なぜカブ[頭]ともいうのか?」「カブトを意味する漢語音コウ<カフ[甲]は、なぜkap > jiaと変化したか?」「ヤマトコトバのカブ[頭・株]と漢語のカフ[甲]kapと英語のcapは、なぜ音義ともちかいのか?」そんなふうに、まじめに考える人にとっては、この[64音図]のようなものが必要とされるにちがいありません。この場合は、カルタ式よりも辞典式のもの、または一覧表式のものの方がよさそうです。
「現代日本語音図」(試案)
前回紹介した「64音図のこころみ」(2001~2003)は、辞典式のものを目ざしていました。構想自体は悪くなかったと思いますが、いざ作業をはじめてみると、あまりにもテマヒマのかかる仕事なので、途中で断念した経過があります。 そのあと、じっくり時間をかけ、実用的な「一覧表式音図」としてまとめたものが、「現代日本語音図」(イズミ試案)です(2008年6月)。
今回は、プロの編集者から助言を受けながら編集をすすめ、校正をくりかえしました。特製のカバーをつけるなどして体裁をととのえ、700円という定価も表記しました。
「8音図」と「64音図」の2段階方式
この「現代日本語音図」は、大判用紙(60cm ×84cm)1枚のA面で「8音図」、B面で「64音図」を解説しています。A面の「8音図」では、8個の音素グループ(a, k, m, n, p, r, s, t)について、「発声方法」、「基本義」、「日漢英の用語例」の順に解説します。
この音図は、「音素(とりわけ子音)の発声法のちがいが、基本義のちがいを決める」という原理に沿った内容になっています。この原理は、日本語・漢語・英語など、どの民族にも共通のものです。いま、ここに提案したものは「日本語版」ですが、まったくおなじ原理で、やがて「漢語版」、「英語版」の「8音図」や「64音図」が作成されることを期待しています。
B面の「64音図」は、「日漢英共通64音図」という名称にしましたが、これも「現代日本語音図」であることは、「8音図」と同様です。ただ、現代日本語が「ヤマトコトバと漢語と英語など外来カタカナ語とのチャンポン語」だという現実から、「現代日本語音図」は「日漢英共通音図」でもあるべきだと考えたわけです。
解説の内容や順序などは、ほぼ「カード64」とおなじ要領で編集しました。その点では、この「64音図」と「カード64」は「双子の兄弟」みたいな関係です。
「日本語(ヤマトコトバ)の音韻感覚をつかみたい」、「第2言語として英語(中国語)を学んでいるが、英語(中国語)の音声がピンとこない」、「日本語の音韻感覚は、どうして英語(中国語)に通用しないのか?」そんな問題を抱えこんでいる人たちに、ぜひ一度この「8音図」や「64音図」を試してみられるよう、おすすめします。「8音図」に習熟したうえで「64音図」を使用されれば、抜群の効果が期待できると思います。
2011年9月27日火曜日
「五十音図」を見なおす
「象形言語説」紹介記事、1991
「カナノヒカリ」908号、2000
「64音図のこころみ」 2001
「語音資料リスト、その1」 2002
「語音資料リスト、その2 」 2003
象形言語説の応用①
仮説の「検証」から「展開」「応用」へ
これまでは、仮設「象形言語説」の「検証」に重点をおいて作業をすすめてきました。その検証作業にどうやらメドがついた感じで、このあと「展開」「応用」の段階にはいるわけです。
具体的な作業として、なにができるか? あるいは、なにをしなければならないか?
まずは、「象形言語説」にしたがって日本語を見なおすことです。具体的な作業としては、「五十音図」を見なおし、修正版をつくること。さらには「現代日本語音図」をつくることなどです。
故志田延義先生のコトバ
この話になると、故志田延義先生のコトバが思いだされます。わたしが「コトダマの世界…『象形言語説』の検証」を発表したとき、先生はたいへん興味を示され、「音義説・言霊論を科学的に再構築することを目指したもの…論議に事欠かない意欲的な新著だ」という趣旨の一文を地元の新聞社に寄稿されました(北日本新聞、1991.10.17.)。そしてある日、「仮説の検証も必要だが、この仮説を応用してなにができるか、そっちの方にも興味がある」と注文をつけられました。しかし、当時のわたしは仮説の「検証」作業だけで精いっぱい。「応用」までは、考えがおよびませんでした。
現代日本語はチャンポン語
ところで、日本語はもともと どんなコトバだったでしょうか? そうです。もとはヤマトコトバ中心で、外来のコトバはごく少数でした。ヤマトコトバの音韻感覚さえわかっていれば、どんな場面でも自由に対話できました。
それが時代の変化とともに、日本人の生活環境が変化し、日本語そのものが変化してしまいました。現代日本語は、全体構造としては あいかわらずヤマトコトバ中心ですが、語彙体系の内容を見ると、漢語や英語などからの外来語がやたら増えています。現代日本語は、まちがいなく複合語、つまりチャンポン語です。
「五十音図」は現代日本語に通用しない
現代日本語はチャンポン語でありながら、ヤマトコトバの音韻感覚で全体を統一しようとしてきました。そこにムリがありました。ヤマトコトバと漢語と英語などの外来語は、もともと独立した民族言語であり、それぞれ独特の音韻感覚をもっています。その音韻感覚のちがいを無視して、ヤマトコトバの音韻感覚を外来語に適用しようというのは、ムチャクチャです。
「無理が通れば、道理が引っこむ」 コトバの交通整理ができなくなり、いたるところで脱線・衝突事故がおこることになります。
「五十音図」を見なおす
「五十音図」は、ヤマトコトバの音韻組織にあわせた音図なので、ヤマトコトバの習得にはきわめて有効です。しかし、外来語には通用しません。それでは、どうしたらよいでしょうか? コタエは簡単です。日本語の実態が変化したのですから、音図も変化するのが当然。これまでの「五十音図」のかわりに、現代日本語全体に通用する音図をつくればよいわけです。つまり、ヤマトコトバをはじめ、漢語、英語などにも通用するような音図をつくることです。
「そんな音図、できるわけがない」などといわないでください。「成せば、成る」、「窮すれば、通じる」、そして「必要は、発明の母」です。
音図は、実用品です。学術研究論文ではありません。できるだけ合理的・科学的であることは必要ですが、あわせて実用的なことが必要条件です。
音図をたよりにコトバを学習するのは、海図をたよりに航海するようなもの。より正確で精密なものが求められますが、なにもないよりは、初歩的なものでもいいから、1日でも早く具体案を提出することです。さしあたり、「五十音図」修正版づくりから議論をはじめ、しだいに本格的な「現代日本語音図」づくり作業にはいるというようなことも考えられます。
董公如氏の「五十音図修正提案」
「五十音図」は、カナ表記を前提にしています。カナは表音文字なので、ヤマトコトバを表記するには、漢字よりも簡単で便利です。まず、カナが発明されなければ、「五十音図」も作れません。また、カナの方が漢字にくらべて、はるかに少数の文字数で文章が書けます。ただし、カナは音節文字なので、音素文字のローマ字にくらべると、正確さや精密さが不十分です。
日本では明治・大正の時代から、カナモジ運動やローマ字運動など文字改革をめざす運動がおこりました。しかし、「五十音図修正論」というのは、あまり聞いた記憶がありません。
かえって、日本語を第2言語として学習した中国人の中から「五十音図修正論」が出されました。
董公如さん(故人)の「五十音図修正提案」がその1例です。提案の要点は、「五十音図のカ行・サ行・タ行などに、子音だけを表わすモジ記号(k, s, tなど)をくわえる」というもの。提案理由は、董氏自身が中国から日本へ留学して医術を学んだが、日本語の中にはたくさんの外来語、カタカナ語があり、あとであらためて もとの外国語(英語・ドイツ語・フランス語など)を学習する必要にせまられた。k, s, tなどの音素文字を採用することで、日本語文の表現能力が高まり、外国からの留学生たちの日本語学習にも役だつだろうというわけです。
董氏の修正提案は1995年秋に作成され、伊井健一郎教授(姫路獨協大学)を経由して、1999年にわたしの手元にとだきました。わたしは董氏の修正提案を要約して「国語運動へのヒント…中国の研究から」という小文にまとめ、「カナノヒカリ」(財法・カナモジカイ機関誌908号。2000.10.5.)誌上で報告しました。ざんねんながら、ほとんど反響がありませんでした。
「現代日本語音図」づくりをめざして
現代日本語全体に通用する音図をつくるには、どうすればよいでしょうか? 「五十音図」はカナという音節文字で表記されていて、ヤマトコトバの原理・原則を習得するための特効薬みたいな作品です。しかしカナ式音節文字では、ヤマトコトバと異質の語音構造を正確に表記することが困難です。やはり、音素文字のローマ字表記の方が、はるかに正確であり、実用的です。
これまで、「五十音図」はカナ表記が習慣でしたが、ローマ字表記を採用すれば、ヤマトコトバでも漢語その他の外来語でも、自由自在に表記できます。まずはローマ字で現代日本語を書いてみてから、あらためて「どんな音図がよいか」考えてみましょう。
「8音図」案
ひとくちに「現代日本語音図」といっても、具体的にはさまざまな発想でさまざまな案が提出されることでしょう。わたしの提案は、「8音図」、「64音図」という2段階方式のものです。
まず、現代日本語の単語を音素段階まで分解し(=ローマ字で表記)、音素別(a, k, sなど)に抽出します。つぎに、この音素群を「調音方法のちがい」などの視点から、8個の小グループに再編成します。これが、わたしの「8音図」案です。
a | k | m | n | p | r | s | t |
a, e, i, o, u, w, y | k, g, ng, h | m | n | b, p, f, v | l, r | s, z | d, t |
■aグループは、母音・半母音のグループ。
■ヤマトコトバのハ行音は、もとp, ph, f音と解釈されています。
■l音とr音は、英語などでは明確に区別されますが、日本語などでは区別されません。英語では、母音化することもあります(car, card, talk, walk)。
■一般に、子音が基本義を決定し、母音は関係しないと考えられています。ただし、母音も子音なみに作用することがあります(ia>ya[矢]、ua>wa[輪]など)。.
■この音図は、現代日本語の実態に合わせて作った音図ですが、漢語・英語など外国語との共通音図としても利用できるようになっています。
■音素群の配列順序は、最初五十音順にしていましたが、途中からabc順、つまりa, k, m, n, p, r, s, tの順にしました。
「64音図」案
「8音図」ができたことで、「現代日本語音図」づくりの基礎作業は終わったといえます。この「8音図」にしたがって、ヤマトコトバや各種外来語を表記することができ、それを資料として外国語との音韻比較作業をすすめる道もひらけてきます。
ただし、いまでは「カ」、「タ」、「ナ」などと聞いただけで、すぐに カ[鹿・蚊・香・日・髪]、タ[田・手]、ナ[菜・名・刃]などの単音節語を連想できる日本人がすくなくなりました。
そこで「8音図」にあわせて、「8音の順列組合わせ」による「64音図」案を用意しました。「カ」、「タ」、「ナ」だけではピンとこない人でも、カク[掻・書・画・懸・欠]、カツ[且・勝・合]、カム[噛・醸]、カル[刈・借・狩・枯・干]、タツ[竜・絶・立]、タル[足・垂]、ナク[泣・鳴]、ナス[鳴・成・為]、ナル[鳴・成・為]などの2音節語になれば、かなりピンとくるのではと考えたからです。
a-a | a-k | a-m | a-n | a-p | a-r | a-s | a-t |
k-a | k-k | k-m | k-n | k-p | k-r | k-s | k-t |
m-a | k-k | k-m | k-n | k-p | k-r | k-s | k-t |
n-a | n-k | n-m | n-n | n-p | n-r | n-s | n-t |
p-a | p-k | p-m | p-n | n-p | n-r | n-s | n-t |
r-a | r-k | r-m | r-n | n-p | n-r | n-s | n-t |
s-a | s-k | s-m | s-n | s-p | s-r | s-s | s-t |
t-a | t-k | t-m | t-n | t-p | t-r | t-s | t-t |
■ヤマトコトバのアユ[鮎・肖]はa-aタイプ、アウ[合・会]<アフはa-pタイプ、ハム[食・嵌]はp-mタイプに分類されます。
■漢語のカツ[割](上古音kat、現代音ge)や英語のcut(中古音cutten)は、ヤマトコトバのカツ[且・勝・合]とおなじk-tタイプに分類されます。このことから、日漢英共通基本義として「カツカル・カチワル」姿が推定されます。
■漢語のコウ<カフ[甲](上古音kap、現代音jia)や英語のcap(古代音caeppe)は、ヤマトコトバのカブ[頭・株]・カブラ[蕪]とおなじk-pタイプに分類され、日漢英共通基本義として「カブル・カブリツク」姿が推定されます。
■「コトバの意味を決定するものは子音」なので、この音図では、母音が無視されます。また、ヤマトコトバとのカツ・カブは2音節と計算され、漢語の[割](kat)や[甲](kap)、英語のcut, capなどは1音節と計算されますが、ここでは音節の計算は無用。いずれもk-tタイプ、k-pタイプなど、等質の語彙比較資料と見なされます。
■この「64音図」は、漢語や英語との音韻比較にも利用できるので便利です。
■この「8音図」、「64音図」とも、イズミ個人の試案に過ぎませんが、「現代日本語音図」づくりのたたき台として役立つことができればと願っています。
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